聖徳太子
飛鳥時代に厩戸王って方がいて推古天皇の皇太子だったんだけど、推古天皇が長生き過ぎて即位できずに亡くなっちまった。で、亡くなった後に追称されたのが「聖徳太子」って尊称なんだけど、昔は一万円札の定番だったなぁ。
この人、曽我氏と組んでいろんなことをしたらしいんだが、その一つの憲法の制定がある。憲法っていっても今の憲法と違って、役人の心構えを書いた文書ってな感じなんだが、これが結構気に入ってたりする。だいたいこんな感じの意味のことを言っている。もちろん、時代に合わない部分もあることはあるんだが、いいこと言ってるなぁって感じだなぁ。今でも十分通じると思うし、政治家とかお役人さんは心に止めといて欲しいって思ってたりして。
第1条 和を大事にして、争わないようにしなさい。人はすぐ群れたがり、理に基づいて考えようとする人は少ないものです。だから、多くの人たちは、上司や親の言うことに素直に従わず、周りの人たちとも上手くいかないのです。でも、上の者も下の者も互いに思い遣って話すことができたら、みんなの行動は自然と道理に適うようになり、どのようなことでも成就するようになるに違いありません。
第2条 3つの宝を大事にしてください。3つの宝とは、「仏」と「法」と「修行の場」のことです。それらは、命ある者の最後の拠り所であり、全世界の究極の規範なのです。どのような時、どのような人でも、尊ばないことがあるでしょうか。救いようのない極悪人はほとんどいません。よく導くことができれば、皆正道に従うようになるものです。でも、仏の教えがなければ、その曲がった心を正すことはできないでしょう。
第3条 命令されたら、謹んで必ず実行しなさい。主君は天であり、家来は大地なのです。天が大地を覆い、大地は天を載せています。だから、季節が正しく巡り、万物が安んじられるのです。逆に大地が天を覆ってしまったら、どうなるでしょうか。全ての秩序が崩れ、世界が破壊されてしまいます。ですから、命令を受けたら、謹んで必ず実行することが大事なのです。さもなければ、社会の秩序は崩壊し、自滅の道を歩むこととなります。
第4条 礼儀を保ってください。人々を治める基本は礼儀なのです。上の者が礼儀に欠けていれば、下の者の秩序は乱れ、下の者たちの秩序が乱れれば、犯罪が増えます。上の者の礼儀が保たれていれば、社会は乱れず、人々の間で秩序が保たれ、国全体が自然に治まるのです。
第5条 私欲を捨て人々の訴えを厳正に裁きなさい。訴えは日に1,000件もあり、1年にしたら大変な数です。最近、賄賂の額を確かめてから訴えを聞く者がいます。多くの賄賂を出せる民の訴えは、池に石を投げ込むようにすぐに受け入れられますが、貧乏な者が訴えても、水を石の中に染込ませようとするもので、聞き届けられることはありません。貧乏な者たちはどうしたら良いか分からず、困り果てるのです。このようなことは、官吏の道に背くことです。
第6条 勧善懲悪は良い風習です。善行を見かけたら必ず褒めて皆に伝え、悪行を見たら必ず直させなければなりません。他人と争ったり、他人を騙したりする人は、兵器と同じであり、民を傷つける刃なのです。また、人に媚びへつらう者は、上の者と一緒にいるときは、下の者たちの過ちばかりを言い立て、下の者と一緒にいるときは、上の者たちの悪口ばかりを言うものです。このような者たちは、忠義心もなければ、仁愛の心もなく、国を乱す原因にしかならない輩なのです。
第7条 人にはそれぞれ役割というものがあります。役割を実行する時は、忠実に執行し、与えられた権限を濫用してはいけません。賢明な人が役人になれば、皆がよくやっていると褒
めます。邪な人が役人になれば、世の中に災いが満ち溢れます。生まれながらに賢明な人はほとんどいません。皆日々努力して達人になっていくものです。どのような官職でも適任の人が就けば、必ず上手くいくものです。そうすれば、国家は末永く続き、危うくなることはないのです。
第8条 朝早く役所に行って夕方遅くなってから退庁しなさい。公務というものは、生半可にできないものです。一日精一杯働いても、やるべきことを全て終えることは難しいものです。遅く登庁したのでは緊急の案件に間に合わないし、早く帰ると仕事をやり残してしまいます。
第9条 誠実は人の基本です。何をするにも誠実でなければなりません。事の善悪も成否も、全て誠実さにかかっています。官吏たちに誠実さがあれば、どんな問題も解決するでしょう。でも、なかったとしたら、どんな取組みも失敗するでしょう。
第10条 怒りを鎮め顔に出さないようにしなさい。相手が自分の考えと違っていても怒ってはいけません。人それぞれに考えがあり、正しいと考えていることがあります。いつも自分の言うことが正しくて、相手が間違っているとは限らないのです。みんな普通の人間なのです。それに、絶対これが正しいと誰が決めることができるでしょうか。ですから、相手が怒っていたら、自分の方に間違いがあるのではないかと考えてみてください。皆の意見をよく聴いて、行動するようにしてください。
第11条 部下の行動をよく視て、功績・過失をよく見極め、それに見合う賞罰を必ず行いなさい。最近、功績がなくても昇進したり、罪があっても罰せられないことがあります。管理監督する者は、賞罰を適正かつ明確に行うべきなのです。
第12条 勝手に税金を取ってはいけません。国家に2人の君主はなく、民にとっての主人は一人だけなのです。官吏は任命されて仕事をしているだけですから、君主の下では皆臣下なのです。どうして、公の税と一緒に、民からお金を巻き上げていいということになるのでしょうか。
第13条 仕事に就いたら前任者と同じくらい詳しくなりなさい。病気や出張等で仕事ができない時もあるでしょうが、仕事をする際は、よく勉強して前々から熟知していたようにしなければなりません。前任者のしたことは知らないなどと言って、公務を停滞させてはいけません。
第14条 嫉妬してはいけません。相手を嫉妬すれば、相手も嫉妬します。嫉妬の憂いは果てしないのです。自分より知識が豊かな人を見れば嫉妬し、自分より才能の豊かな人をみれば嫉妬する。それでは500年経っても賢者に会うことはできず、1000年待っても聖者は現れません。優れた人たちがいなくては、国を治めることはできないのです。
第15条 私心を捨てなさい。私心があれば、恨みの気持ちが湧き起こります。恨みの気持ちは、不和を招きます。不和になれば、私心で公務を動かすこととなり、公の妨げとなります。恨みを抱けば、決まりを破る人も出てきます。最初に、「和を大事にして・・・」と言ったのは、こういうことなのです。
第16条 人々を動員するときは時期をよく考えなければなりません。動員するときは民に時間がある冬にすればいいのです。春から秋は農業などに忙しい時期ですから、動員してはいけません。民が耕さなければ何を食べ、民が蚕を作らねば何を着ればいいのでしょうか。
第17条 物事を決めるときは一人で判断してはいけません。必ず皆で論議して判断するようにしなさい。些細なことは必ずしも論議する必要はありません。でも、重大な決定を一人ですると、誤ることがあります。そんな時でも、皆で検討すれば、道理に適う結論が得られるものです。
飛鳥時代に厩戸王って方がいて推古天皇の皇太子だったんだけど、推古天皇が長生き過ぎて即位できずに亡くなっちまった。で、亡くなった後に追称されたのが「聖徳太子」って尊称なんだけど、昔は一万円札の定番だったなぁ。